鍼治療で感じる「ズーン」という独特の響き

鍼の「ズーン」とはどんな感覚?
鍼を刺すとき、多くの方は「注射のような痛み」を想像します。鍼灸師の技術や使用する鍼の番手(太さ)、患者さんの感受性にもよりますが、鍼は髪の毛ほどの細さであるため刺す瞬間の痛みはほとんどありません。その代わりツボや筋肉のポイントに当たると「ズーン」とする響きが生じることがあります。
患者さんの表現としては、以下のような言葉がよく使われます。
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重だるい
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奥に響く
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じんわり広がる
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押されているような感覚
この「ズーン」は不快な痛みではなく、鍼特有の感覚として多くの人が体験します。鍼灸の世界では「響き」と呼ばれる重要な反応です。
何故「ズーン」という響きを感じるのか
では、なぜ鍼を刺すとズーンと感じるのでしょうか?その正体にはいくつかの生理学的な要因が関係しています。
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筋肉や筋膜の反応
鍼が筋肉やその周囲の膜(筋膜)に届くと、そこにある感覚受容器が刺激を受けます。その結果、筋肉が一瞬収縮して奥に響くような重だるさを感じます。 -
神経への作用
鍼の刺激は痛みや圧力を伝える神経を通じて脳に伝わります。ただし、これは「鋭い痛み」ではなく「鈍い刺激」として認識されるため、「ズーン」とした感覚になります。 -
血流改善のサイン
鍼の刺激で血管が拡張し血流が改善すると、その変化も「ズーン」とした感覚として現れることがあります。治療のプロセスの一部ともいえる現象です。
「ズーン」は効果の証拠なのか
時折いただく質問に「ズーンと感じないと効果がないのですか?」というものがありますがそのようなことはありません。
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ズーンを強く感じる人もいれば、ほとんど感じない人もいます。
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体質やその日の体調、筋肉の状態によって響き方は変わります。
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鍼灸師は症状や目的に応じて、あえて響かせる施術を行うこともあれば、刺激を控えて心地よさを重視することもあります。
つまり、「ズーン=効いている証拠」ではなく「体が反応しているサインの一つ」と考えるのが一般的です。
ズーンが強く出るとき・出にくいとき
響きの感じ方には個人差が大きくありますが、次のような状況で違いが出やすいといわれています。
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体が疲れているとき:自律神経がうまく調節されず刺激に敏感になりやすい。
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緊張しているとき:筋肉がギュッとこわばっているため、強く響くことがある。
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刺鍼部位の違い:顔や手首のように皮膚が薄い部分は響きが少なく、腰や太もものような筋肉が厚い部分はズーンが出やすい。
ズーンを快適に受けるための工夫
鍼灸治療は本来「心地よいもの」です。もし響きが強すぎて不快に感じる場合は無理に我慢せず術者にお伝えください。鍼灸師は刺鍼の深さや角度、鍼の太さを調整して刺激を和らげることができます。
さらに、次のような工夫も効果的です。
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深呼吸してリラックスする
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体に力を入れず、自然にゆだねる
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不安や怖さがあれば事前に相談する
まとめ
鍼の「ズーン」とする感覚は、筋肉や神経、血流の変化によって生じる鍼治療特有の体験です。痛みではなく「体が反応しているサイン」として捉えると安心できます。
必ずしもズーンが出なければ効果がないわけではなく、心地よさを重視した施術も可能です。大切なのは無理に我慢せず、術者と相談しながら自分に合った施術を受けることです。
「ズーンが怖くて鍼に挑戦できなかった」という方も、実際にはリラックスや血流改善を実感できる心地よい体験となることが多いです。
当院でも鍼灸により施術を行うことが多いですが「鍼がどうしても苦手」という方は、指圧、マッサージ、その他手技による施術も行っておりますので是非ご相談くださいね。